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2023.06.29

企業型確定拠出年金の効果 ③企業型確定拠出年金(企業型DC)と中退共の制度比較

企業型確定拠出年金(企業型DC)以外で社長や従業員の老後のお金を積み立てる方法は他にも、中小企業退職金共済(中退共)、養老保険などの生命保険の活用や、確定給付年金(DB)などの選択肢があります。
これらの制度と比較しても、企業型DCの方が利点を多く持つ制度であるといえます。
様々な退職金制度の中で、ここでは多くの中小企業が利用している中小企業退職金共済(中退共)と企業型確定拠出年金(企業型DC)を比較していきましょう。

中小企業退職金共済(中退共)とは



中小企業退職金共済は、中小企業を対象とした、国が運営母体の退職金制度です。よく、頭文字をとって「中退共」と略されている制度です。

事業主が雇用する従業員を対象に、毎月の掛金を全額事業主負担で金融機関に納付します。

退職した従業員の請求に基づき、中退共から退職金が直接支払われるしくみです。

加入している事業所は令和3年度末時点で55万、約560万人が加入している制度で、大企業ほどの手厚い退職金制度を設けることが困難な中小企業にとって、最も身近な退職金制度のひとつといえます。

中小企業退職金共済事業本部(中退共)

https://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/

中小企業退職金共済(中退共)のメリット・デメリット

ここで中小企業退職金共済(中退共)のメリット・デメリットをみていきましょう。

【メリット】

  • 最低5000円から中小企業でも従業員への退職金を積み立てすることができる
  • 掛金の一部の助成がある
  • 掛金が全額非課税になる

【デメリット】

  • 掛金を減額することが困難(従業員の同意が必要)
  • 原則従業員の人数分加入する必要がある
  • 社長・役員は加入不可
  • 働いた期間が短い人(2年未満)は元本割れする

※中退共パンフレットより引用
https://www.lcgjapan.com/pdf/lb09001.pdf

企業型確定拠出年金(企業型DC)との比較

では、中小企業退職金共済(中退共)は企業型確定拠出年金(企業型DC)と比較してみるとどうでしょうか?

まず、中退共の掛金は事業主負担のため損金計上は可能ですが、企業型DCのように給料から天引きする仕組みはないため社会保険料の削減効果はありません。

従業員は全員加入が原則である一方、社長は役員は加入できないため、別の選択肢を用意する必要があります。

多くの場合は従業員一人あたり1万円ほど積み立てるパターンがよく見られますが、中退共の基本退職金は掛金と積立年数に、政令で定める利率(年1.0%)と「厚生労働大臣が定める利率」に加えた利率に基づいた金額が加算されて支給されます。このうち「厚生労働大臣が定める利率」に関しては、直近10年ほどで0~0.02%ほどなので、ほぼ期待できません。

※「厚生労働大臣が定める率」についてのお知らせ(令和5年3月31日告示)

https://onl.bz/wBGYmG4

仮に1万円を30年間積み立てた場合の退職金は約421万円。30年間の掛金は354万円ですので、老後2000万円問題のことを考慮すると、とても十分とは言い難い金額です。

※(試算)退職金シミュレーション|退職金試算|中小企業退職金共済事業本部(中退共)

https://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/taisilyokukin_sisan/cgi/sisan.cgi


従業員の人数分、掛金を負担することは、相当な企業努力が必要です。人材の流動性が高まってきている昨今、早期に退職した従業員の分は必ず元本割れしてしまい、退職後に必ず清算が必要になるという点もネックになります。

企業型DCは、中退共の制度と比較して

  • 掛金について企業、従業員ともにメリットがある
  • 従業員が拠出の有無から拠出金額まで選択できる
  • 社長・役員も制度が利用できる
  • 退職後も老後資産の運用を継続できる

これらの利点があるので、これからの社会によりマッチした制度であるといえるでしょう。

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